ポスターセッションの報告要旨の |
日本マーケティング学会 カンファレンス・プロシーディングス Vol.9 |
中流層における将来不安が生み出す消費:リキッド消費とソリッド消費の視点から |
油谷 博英 株式会社クロス・マーケティング |
坂口 智子 株式会社クロス・マーケティング |
田口 功一郎 株式会社クロス・コミュニケーション |
木野 将人 株式会社東急エージェンシー |
森 陽一 株式会社東急エージェンシー |
水師 裕 武蔵野美術大学 |
発行 : 2020年12月16日 |
分類:一般報告 |
報告要旨 : 我が国では格差社会が拡大し,中流層が下流化する不安に包まれている。ところが現状のマーケティングでは,いまだに中流層を均質な実体として想定する場合が多い。しかし実際には,不安が中流層の消費の性質に異質性をもたらしているのではないか。そこで本研究では,中流層がもつ「将来への展望がみえない」不安が生み出す消費の傾向をリキッド(液状化)消費(Bardhi & Eckhardt, 2017)の理論から検討した。この理論によれば,一過性,アクセスベース,非物質的といった,リキッドな「とらえどころない」消費者行動が近年広がりつつある。しかし経済的なプレカリティ(不安)があれば,セキュリティ感,安定感,自己統制感を便益として,消費は逆にソリッド(永続性・所有・物質的)になるという。この傾向が日本の消費者にもあてはまるのかを検証するため,将来不安をもつ40-50歳代の日本人中流層の調査データをもとに分析した。分析の結果,この層には,コトよりモノ志向(リキッドよりもソリッド志向)の傾向やリキッド消費を抑制する傾向がみられた。この結果は,この層にソリッドなマーケティング対応が有効である可能性を示している。 |
キーワード : リキッド消費 プレカリティ 中流層 ジグムント・バウマン 液状化する社会 |
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